2013年1月4日金曜日

(1697)読了134冊目:「フーコン戦記」

  著者:古山高麗雄、1999年11月・文芸春秋発行、319頁、1714円+税、ビルマ戦記といえば、インパール作戦での絶望的玉砕の愚行を記録した作品が多い。しかし、フーコン谷でも歴史に残る壮大な敗け戦があった。フーコンとは「死の谷」を意味する北ビルマの広大な谷地を言う。ここで日本軍はインパール作戦と同じ様な必敗の戦いを演じた。片腕を失って奇跡的に生還した元兵士(著者)は、長い平穏な戦後、老いを重ねつつ、フーコン敗残の思い出と忘却のはざまにあって、真実を追求しようと東奔西走した。しかし、真実はいつも霞んでおり、泥沼の中に沈んでしまう。特に結末部分の、おびただしい死体の横たわる泥沼で、蛆虫とともに敗退する日本軍敗残兵の様子は、読んでいて震えを感じてしまった。しかし、ほのかな恋情も織り込んでおり名著だ。

2 件のコメント:

  1. 惨めな敗戦の日々の中で、ほのかな恋情を燃やすとは、素晴らしい。
    それにしても、大へんな青春でしたな。
    K.A.

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  2. K.A.さん
    惨めな敗残兵の話だけではやりきれないと著者は考え、ほのかな恋情の話を上手にからませたものと思います。素晴らしい作品ですが、でも戦争は嫌です。

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