2012年6月30日土曜日

(1509)読了108冊目:「メフェナーボウンのつどう道」

  古処誠二著、2008年1月・文芸春秋発行、345頁、1700円+税。題名の「メフェナーボウン」とはビルマ語で「仮面」を意味するという。出版の際、最初からわからない題名にするよりも、「仮面のつどう道」にしたほうが読者に親切だと思うのだが。大戦末期、ラングーンの兵站病院も、350キロ先のモールメンまで撤退の命令が出た。怪我人は足手まといになるため、置き去りにするしかない。途中、隊列から離れてしまった2人の日赤看護婦と、下士官、担架の負傷兵、2人の従軍慰安婦、ビルカン(ビルマ人看護婦)、日本人母娘という奇妙な集団の逃避行、途中で各人の考え方に微妙な差異が生じ、それぞれの「仮面」が剥がれていくという筋書き。第一線ではなく、最後方での撤退なので、壮烈な戦記物とは違うが、それだけに心に訴えるものが多い。お勧めだ。

2 件のコメント:

  1. 全く奇妙な集団ですな。
    「百人百様」の考え方があるので、逃避行のような異常事態では、大へんなことでしょうな。
    K.A.

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  2. K.A.さん
    人間は最後まで「仮面」をかぶっていたいのですが、戦争時の退却の場合など、どんどん仮面がはがれていくことを教えています。面白かったです。(N)

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