2012年3月26日月曜日

(1413)読了94冊目:「路上にたたずみむせび泣く」

  マウンターヤ著、南田みどり訳、1982年・勁草書房発行、256頁、定価1500円。国営タクシー運転手の物語だが、著者があらかじめタクシー会社の幹部以外には内密で21日間勤務し、実体験した上で執筆した作品。主人公は叔母の家では寝るだけで、後はこの会社でまじめに働いた。厳しい売り上げノルマがあったが、毎月このノルマを達成し、若干の金銭的余裕はあった。食事は将来結婚を夢見ていた恋人が働いている軽食堂で済ませていた。ある日、主人公の運転するタクシーに乗車したという金持ち貴婦人から、高額の金の入ったハンドバッグを車内に置き忘れ、運転手が持ち去ったという訴えが。警察も入る騒動となったが、結局はその貴婦人の記憶違いで平謝り。運転手の誠実さが際立ち、表彰の話しとなる。社会主義国での労働者賛歌の影がある。

2 件のコメント:

  1. 作家は、わずかな勤務期間の体験を、一冊の小説に仕上げたとは、中々の才能の持ち主ですな。K.A.

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  2. k.a.さん
    確かに作家の脳みそは、我々にははかり知れないところがありますね。例えば1週間の旅行で、一冊書き上げるなどすごいですね。(N)

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